Global Eyes

東南アジアからのレポート

REPORTER: NI帝人商事(株)ホーチミン駐在員事務所ハノイ出張所 上辻 和典

2010年12月 Hanoi ベトナム社会主義共和国 ハノイ

「新・世界の工場」への道を歩み始めたベトナムで

REPORTER: NI帝人商事(株)ホーチミン駐在員事務所ハノイ出張所 上辻 和典

工場の新規開拓に奔走する毎日

写真:Tさん Tさん

地図

 当事務所には、3名のローカルスタッフがいます。大ベテランのYさんの主業務は、経理、営業報告、タオル・原料取引の仲介です。Hさんは総務とYさんの補佐、今年8月に本採用となったTさんは24歳の女性で、私のアシスタントとして工場の新規開拓を手伝ってくれています。
今年の春節以降、中国で労働争議が頻発し始め、生産コストが急騰したことから、オーダーが堰を切って東南アジア諸国に流れるようになりました。その受け入れ態勢を整えるのが我々の役目です。変化が急速で、のんびり構えてはおれず、これからも若手を中心にスタッフの増強を図るつもりです。ただ、ベトナムでは、アメリカ向けの生産が圧倒的多数を占める(アメリカの人口が日本の2倍強であるのに対して、ベトナムでのアメリカ向け衣料生産は日本の約5倍強)ため、「小さい・安い・うるさい・厳しい」の4重苦の日本向けは全く人気がありません。訪問先の工場で門前払いされたことは幾度もありますが、我慢強く、粘り強く行くしかありません。現事務所は18m²と手狭であるため、人員増強に向けて移転を検討中です。

写真:当事務所のスタッフ

台風の襲来で「過去最悪」となった出張

 事務所の近くにハノイ駅があります。昔の中国の駅のような古びた駅です。
一度、300km南のゲアン省まで電車で出張しました。意外にも定刻に出発したのですが、当夜台風がゲアン省を直撃。通常6時間で行けるところ、14時間もかかり、夕方6時着のはずが、現地に着くと深夜2時になっていました。移動手段はバイクタクシーで、台風で停電している中、そこらじゅうに垂れ下がった電線に首をもっていかれないかひやひや。
ホテルに着くと受付は眠りこけていて、面倒くさそうに「満室です」。「この野郎」と思いつつ、またバイクタクシーで他のホテルへ。探し当てたホテルも停電、室内は雨で水浸し。過去最悪の出張となりました。

写真:ハノイ駅 写真:ゲアン省ビン行きの寝台車300km 6時間 片道約¥1,100 写真:ビン駅構内の売店
ハノイ駅 ゲアン省ビン行きの寝台車
300km 6時間 片道約¥1,100
ビン駅構内の売店

 下記写真は事務所周辺の、観光地としても有名な旧市街地。いろんな商品を専門に扱うお店が集中していて少しも飽きることがありません。
よくお客さんを買い物にお連れするのですが、自分が欲しくなってついつい買ってしまいます。

写真:時々サンプル用の付属を買いにいくハンボー通り。ボタン・ファスナーなどなんでもあり。 写真:一番人が集まるこの場所は商売の一等地。
時々サンプル用の付属を買いにいくハンボー通り。ボタン・ファスナーなどなんでもあり。 一番人が集まるこの場所は商売の一等地。

商慣習の違いに苦労することもしばしば

 当地の業務で苦労していることが2点あります。
一つは「素材の収集がしにくい」こと。
北部ベトナムには旧国営の紡績工場がありますが、サンプルを持ち合わせていないことが多く、こちらが、風合確認をしたいと言っても、「先にオーダーを。それからサンプル出します。」などと、とりつくしまがありません。サンプルを作って新規客開拓という発想がないので、困ったものです・・・。
二つめは、「縫製工場に対して、我々がほとんどの部材を支給しないといけない」こと。
中国なら全部工場が手配してくれて、製品買いで済むケースが多いのですが、当地ではそういうわけにはいきません。伝票は増える、支払いは増える、寄託枠申請件数は増える・・・。我々もそのお陰で、急速に多忙化しています。

開発著しいハノイ

 「いつ来てもハノイは変わらないですね」と、中国通のあるお客さん。変化の速い中国に比べると、のんびりしているのでしょう。
そんなハノイも今、開発ラッシュで不動産バブルに湧いています。某有名メーカーの方はいくつか不動産を持っていて、「そっちの方が儲かる」と、笑いが止まらない様子。ベトナム人の「成金」も結構いるようです。羨ましい。。。私には無縁の話です。
投資対象となっているのはハノイの西部地域で、韓国人が先行して移転し、KOREAN TOWNの様相を呈しています。このエリアの賃料相場は、当事務所がある地域の6分の1程度。当事務所も来年あたりに移転できれば、と考えています。

写真:SOFITEL PLAZAの向かい側に2棟。事務所ビル 写真:西部地区。インターコンチネンタル ホテルが進出。 写真:南部地区。大型ショッピングモールと事務所ビル
SOFITEL PLAZAの向かい側に2棟。事務所ビル 西部地区。インターコンチネンタル ホテルが進出。 南部地区。大型ショッピングモールと事務所ビル

BIG EVENT 遷都1000年記念

 今年はハノイ遷都1000年にあたる特別な年。西暦1010年に当時の王様リータイトーが、100km程南のホアルーからハノイに遷都し、昇龍【タンロン】と名付けたのが始まりです。その後、いくたびか中国に侵略されたり、支配されたりしつつ、1802年~1945年までフエに都が移された以外は都として栄えました。
今その節目の年でハノイは大賑わいです。

写真:愛国市民が多く、どこへ行っても国旗が。日本人はこの愛国精神が希薄になっていると思い知らされます。 写真:いたるところにタンロン⇔ハノイ1000年の記念塔。 写真:ホーチミン廟も遷都1000年を祝う軍事パレードの準備中。
愛国市民が多く、どこへ行っても国旗が。日本人はこの愛国精神が希薄になっていると思い知らされます。 いたるところにタンロン⇔ハノイ1000年の記念塔。 ホーチミン廟も遷都1000年を祝う軍事パレードの準備中。

お勧めスポット

 観光スポットはハロン湾にどうしても目が行きますが、タムコックという陸のハロンと呼ばれる場所が私は大好きです。日本人は2人までしか乗れないのに、なぜかベトナム人は3人まで乗ってもよい手漕ぎボートで静かな川をゆっくりと行き来します。冬場は観光客も少なく、オールが水を打つ音だけが聞こえる静寂さ。その周囲を切り立った岩山がいくつもそびえたち、さながら「禅の世界」です。
行程も後半にさしかかると、船を漕いでいるおばさんが手刺繍のテーブルクロスなどを売り始めるので、静寂はそこで途絶えますが、値切り交渉に興じるのもまた楽しいものです。

不思議な魅力のハノイ

 私が好きなハノイは、(1)アオザイ、(2)きれいな夕焼け、(3)緑の多さ、(4)湖、(5)遺跡、(6)のんびり、(7)笠です。ハノイ遷都1000年で、国をあげての祝賀ムードは、原稿を書いているちょうど今がまさにその時期で、アオザイを着ている人をよく見かけます。
ベトナムの民族衣裳がフランス統治時代(1858~1954)にそのファッションの影響を受けて今のアオザイになったらしいのですが、あえて露出させているわき腹の一部は、なんとも言えない魅力があります。

44,000本の緑があふれる都
ハノイには70種、44,000本の樹木があるそうですが、幹は太いし背が高い。フランス統治時代に植えられたのでしょう、当時市内を監視していたフラッグタワーから見ても、木の高さがわかります。
まるで、バイクだらけで排ガスにまみれた空気を浄化してくれているようです。

写真:監視塔だったフラッグタワー 写真:タワーのてっぺんから見ても緑の多さがわかります。
監視塔だったフラッグタワー タワーのてっぺんから見ても緑の多さがわかります。
活気づく早朝の湖畔

 ジョギングが好きな私は、ハノイに来た当初、走る場所を探すのにかなり困りました。市内はとても走れる環境でなく、結局歩道が整備されている湖の近くのホテル住まいを決めました。
早朝の湖畔は体操する人、エアロビのおばさん集団、ジョギングする人、フリーマーケットに群がる人などで驚くほど生活感にあふれています。
とても元気なベトナムを感じるのは早朝です。食事どころも湖を囲うように出店していて、週末は学生の集団や家族連れで賑わっています。

写真:湖畔のレストラン。最高のロケーションです。 写真:早朝フリーマーケット。薄暗いのにかなり客が来ます。 写真:チュックバック湖畔で早朝エアロビをする女性達。20人くらいの集団があちこちに。元気がみなぎってます。
湖畔のレストラン。最高のロケーションです。 早朝フリーマーケット。
薄暗いのにかなり客が来ます。
チュックバック湖畔で早朝エアロビをする女性達。
20人くらいの集団があちこちに。
元気がみなぎってます。

ベトナムのシンボル「ノン」
「ノン」と呼ばれるかわいらしい笠は、ベトナムの象徴。天秤棒をかついだ売り子さんたちが町中を歩いて稼いでいる姿は、見ていて飽きません。
特に髪の長い女性が笠をかぶって行商している姿が好きです。

写真:笠をかぶった髪の長い女性 写真:街中で見かける天秤棒の売り子さん
街中で見かける天秤棒の売り子さん

新たに世界遺産となった「タンロン遺跡」
今年8月にタンロン遺跡が世界遺産に登録されました。ベトナムでは他に5ヵ所の世界遺産があり、観光には事欠きません。
この遺跡はホーチミン廟のすぐ近くにあってまだ発掘中。現在期間限定で一般公開されています。
唐の時代にその役人だった阿倍仲麻呂も、8世紀頃に安南都護府があったこの地に派遣されていた、とのことです。現存するのは19世紀のものだそうですが、それでも時間の経過を感じるには充分です。

写真:北門。古さを感じ、重厚感たっぷり 写真:1882年4月25日の刻印 写真:発掘現場は来年初めまでの一般公開。外には大量の発掘物が保管されています。
北門。古さを感じ、重厚感たっぷり 1882年4月25日の刻印 発掘現場は来年初めまでの一般公開。外には大量の発掘物が保管されています。

何事にもジタバタしないベトナム人
「ハノイの人は手を伸ばせば木の実がすぐ取れるからあくせくしない」とか、「暑すぎて昼は寝てばかり」とか、いろいろ言われていますが、それはやっぱり本当だと思わせる光景に出くわします。「お客様のためになんとかしなければ」と思い、必死になるのが我々ですが、こちらの人はあきらめも比較的早いし、次の一手を考えないように思えることもあります。
ベトナムは豊かな国でジタバタするに及ばず、と学校で教育しているようなので、それが文化になっているのでしょう。日本とは決定的に異なる文化意識だと思います。これが仕事面で大きな影響を及ぼします。

写真:ちょっと手をのばせば、そこのおいしい木の実が… 写真:気持ちよさそうに休憩中のおじさん。この人の仕事は自転車の空気入れ。となりに道具がぽつんと置いてあった。
ちょっと手をのばせば、そこのおいしい木の実が… 気持ちよさそうに休憩中のおじさん。この人の仕事は自転車の空気入れ。となりに道具がぽつんと置いてあった。

街角MEMO ハノイのかわいいところ

 かわいらしさや滑稽さを感じるのは、いろんな物をバイクで運搬するからかもしれません。

写真:どこにこんなもの置くのかとおかしくなりました。 写真:看板までも。。。 写真:生きた豚は仰向けにして足を縛れば動けず安全。 写真:なまなましいですね。何のカバーもせず丸出しで。
どこにこんなもの置くのかとおかしくなりました。 看板までも。。。 生きた豚は仰向けにして足を縛れば動けず安全。 なまなましいですね。何のカバーもせず丸出しで。