Global Eyes

ヨーロッパからのレポート

REPORTER: N.I. TEIJIN SHOJI EUROPE GmbH. 中島 英典

2011年4月 Hambrug ドイツ連邦共和国 ハンブルグ

EU経済をリードするドイツは公平で成熟した「大人の国」

REPORTER: N.I. TEIJIN SHOJI EUROPE GmbH. 中島 英典さん

ドイツの経済事情

地図

 EUの経済指数を改めて見てみると、EU加盟27ヵ国全体のGDP総額が米国の約1.2倍で世界最大規模です。その中でも、ドイツはEU経済をリードする存在。その後にGDPランク5~7位のフランス、イギリス、イタリアが続きます。ドイツは人口、GDPともに日本の約66%ですが、大きく異なる点は、日本の1,000兆円近い公的負債はドイツの4倍以上もある点です。欧州経済も色々と問題含みで、決して盤石ではありませんが、日本の現況は心配です。
失業率は日本の5.2%に対してドイツは7.1%と少し高いですが、失業者に対する手厚い社会保障のお陰で悲惨さは感じません。2008年の金融危機以降の対応でも、まずドイツ企業は労働者に「ショートワーク」を実施しました。1年間の生産調整の後、雇用調整の局面では需要回復の兆しが見られたことから、失業率は大きく増えませんでした。
西欧州各国は長年社会主義系政権が続いた結果、労働者にとって理想的に法整備されている分、企業負担は重く、高コスト体質になっています。ドイツの昨年の経済成長率は3%台でEU諸国の中ではトップですが、年7~10%成長の新興国のように派手な好況感はありません。けれども、公平で成熟した社会です。また、日本のような政治的未熟さもなく、米国のような大国のおごりもなく、その点においてもフェアーな「大人の社会」だと思います。

EU諸国全体で幅広く展開するNITSEのビジネス

写真:パリ支店長とTGV車内で打ち合わせ
パリ支店長とTGV車内で打ち合わせ

 当地に赴任する前の非繊維部門の海外での活動拠点は、南米と北米、アジアが中心で、欧州とはビジネス上の縁は薄く、自身の中では空白の地域でした。もちろんハンブルグには着任した時に初めて来ました。そのため赴任当時は、欧州と米国の比較を通してEU諸国の文化を理解しようと試みましたが、なかなかうまく行きませんでした。その後、米国の代わりに南米を当てはめたところ、南米諸国は宗主国以外の国でもEUとの文化的・経済的つながりが強く、そのチャネルを使って理解を試みると馴染みやすいことに気がつきました。
産業資材部門の取引先は北から北欧、ドイツ、UK、オランダ、フランス、中欧、イタリア、スペイン他のEU諸国全体に幅広く分布しており、パリとロンドン支店のSales Managerのサポートを受けながら活動しています。それぞれの国で言語はもとより文化、人々の嗜好、ビジネスのスタイルも異なり、その違いが大変刺激になります。

ハンブルグの気候風土

写真:北海からハンブルグまで100km流れるエルベ川で休日にピクニック(貨物船はこの川でハンブルグ港まで入ります)
北海からハンブルグまで100km流れるエルベ川で休日にピクニック(貨物船はこの川でハンブルグ港まで入ります)

 ハンブルグの緯度は北緯53度33分で、当社の海外事務所では最北に位置します。ちなみにモスクワが北緯55度、極東で同緯度の地域を検索すると樺太(サハリン)の先端部が北緯54度のようです。高緯度であるために夏至の日照時間は長く、日の出は4時50分、日没は21時53分で完全に暗くなるのは22時半過ぎになります。一方で冬至の日照時間は当然のことながら大変短く、日の出は8時35分、日没は16時32分で、朝出勤してからもしばらく夜が明けない状態が続きます。
気温は6月に30度超える真夏日が2週間程度ありますが、平均すると5月から7月は20℃前後の晴天が続き、1年のうちで最も快適かつ短い夏を満喫するため、当地の人々は屋外の庭やテラスで夕食を取ったり、週末はBBQパーティーをしたり、屋外での催しが増えます。
8月半ばを過ぎると20℃を下回る日が多くなり、とても短い秋に入ります。夏時間が終わる10月末から3月末までは暗く寒い長い冬です。大西洋を北上する暖流の影響で北欧州は高緯度の割には2桁の氷点下になることは少ないものの、暖かい海水温度と冷えた大陸との温度差で発生した雨雲に厚く覆われ、3月頃まで暗い憂鬱な日々を過ごさなければなりません。

写真:通学路の景色(春) 写真:通学路の景色(秋) 写真:地方出張先での樹氷
通学路の景色(春) 通学路の景色(秋) 地方出張先での樹氷

欧州の文化――ドイツ人の生活ぶり

 当たり前の話ですが、改めて周りを見回すと白人の多いところで、アジア人は電車に乗っていても自分1人ということが多く、当事務所でもアジア人は社長を含め4人しかいません。ドイツ人は男女ともに体が大きいと聞いていましたが、ナショナルスタッフと比較すると自分の体格は中の上くらいでしょうか。「そんなことで安心していてはいけない」と自分を戒めるよう努めていますが、なかなか効果が上がりません。
とても勤勉で責任感も強いドイツ人は、同じ会社で働く仲間として、良きパートナーです。仕事ぶりは非常に効率的で、年間30日の有給休暇もきっちり取り、ワークライフバランスも取れています。日に3度食べる食事も含めて、普段はとても質素に生活していますが、節約して貯めたお金を旅行に使ったり、家や自動車の購入資金に当てたりしています。
ドイツ人は気さくで、知らない人にでも気軽に挨拶をすることが多く、またとても親切で、赴任当初電車の乗り方が分からずに案内板を凝視していた際に2、3人の人から声を掛けられ、その温かさと心の余裕に感動しました。また、休暇で長期に留守をする際には隣近所に声を掛けて防犯面でお互い助け合う、留守中に届けられた荷物は近所の人が預かるなど、日本の都会の生活ではなくなった習慣が残っており、我が家は良きドイツ人の隣人に恵まれています。

写真:身長2メートルを超える2人に囲まれる中島さん 写真:事務所の管理や庶務を担当する、NITSE勤続30年のポルトガル人夫妻
身長2メートルを超える2人に囲まれる中島さん 事務所の管理や庶務を担当する、NITSE勤続30年のポルトガル人夫妻

ドイツ・グルメ事情

写真:隣人のドイツ人夫妻宅に招かれた際のメインディッシュ
隣人のドイツ人夫妻宅に招かれた際のメインディッシュ

 ドイツの食品と言えばまず初めに思い浮かべるのがソーセージですが、家族帯同赴任までの数ヵ月間にビール、ハム、チーズとともに全ての種類を食べ尽くして以降、口にすることはなくなりました。「ドイツには特筆するほどのおいしいものはない」と言われ、「ドイツ人は料理もしない」とも言われますが、全てのドイツ人が料理をしないというのは間違った情報であり、我が隣人のドイツ人夫妻の家庭料理は旬の食材を使った絶品です。
例えば9月のメニューは、調理法が違う3種類の豚バラ肉に旬の梨とインゲンの煮込み、付け合わせにポテトというメニューでした。次の季節にはどんな料理が出るのか楽しみです。もちろんお返しに我が家で日本の家庭料理もご賞味いただいています。

ドイツにおける在留邦人の生活

 外務省によると、ハンブルグの在留邦人の数は、管轄の近郊小中都市を含めると1,681人だそうです。統計上の長期滞在者の数は増えていることになりますが、企業駐在員の数は年々減っており、2008年の金融危機以降は事務所を閉鎖する企業やロンドンやデュッセルドルフ(長期在留邦人数 6,926人)など、他の欧州の都市へ移転する企業が多く、感覚的には駐在員とその家族の数は1,000~1,100人程度であると思います。
ハンブルグに駐在する企業は電気、機械メーカーが多数派になっています。日本人学校の生徒数も小学校で64名、中学校で16名と、日本の過疎地並みの人数で、これも寂しい話ですが、少人数で一人ひとりに目が届く充実した教育を受けられる環境であるとも言えます。我が家はその日本人学校から徒歩7分の場所にあります。事務所があるハンブルグ市中心から18km、電車で30分の距離ですが、近くに牛の牧場や乗馬クラブなどがあり、緑の多い大変のどかなところです。
日本の食材は、アジア人が経営する食材店で手に入ります。日本で買う値段の2.5~3倍で、賞味期限ギリギリか期限表示の上にシールが貼り付けてあるという物ですが、それでも大変貴重です。賞味期限が2ヵ月以上もある豆腐が存在するということを、こちらに来て初めて知りました。
また、当地のVAT(消費税)は19%(食品等一部商材、サービス料は7%)で、それらは内税で表示価格に含まれており、日本のようにディスカウントショップのような業態がないため、競争は少なく定価が守られています。一般的に物価は高く感じます。ただし、「物の価値に比して」という前提が付きますので、食材については日本並みの物を望まなければ(望んでも手に入りませんが)肉にしても野菜にしてもkg当たりの単価は日本よりかなり安いです。
ちなみに法律で日曜日の商店営業は一部の例外を除いて禁止されているので、土曜日に買い忘れると、調達する術がありません。すぐ近くにコンビニがある東京の便利さは当地にはありませんが、簡単な食料品、飲料、雑貨であれば、24時間営業のガソリンスタンドでも買えます。

写真:ビール片手にソーセージを焼く隣家のご主人 写真:隣人のドイツ人夫妻主催に招待されたBBQにて。中央は、中島さんのお嬢さん(小学校4年生)
ビール片手にソーセージを焼く隣家のご主人 隣人のドイツ人夫妻主催に招待されたBBQにて。中央は、中島さんのお嬢さん(小学校4年生)

最後に・・・

 NITSEはこれからもNI帝人商事グループが欧州ビジネスを展開する上での重要拠点として存在し続け、持続的に成長して行くべく、ナショナルスタッフを中心に一丸となって進んでいきます。今後も引き続き、日本及び世界各地で活躍されている駐在員の方々との協力と、さらなるご支援をお願い申しあげます。最後になりましたが、日本と異なる環境の中で何事も前向きにとらえ、日々支援してくれている家族に対し、この場をお借りして感謝の言葉を添えさせていただきます。

写真:中島さんのお庭のチューリップ 写真:市内中心部に位置するアルスター湖
中島さんのお庭のチューリップ 市内中心部に位置するアルスター湖