高い補強効果と環境負荷低減の両立を実現 ゴム補強用ポリエステルナノファイバー短繊維の開発

帝人フロンティア株式会社(本社:大阪市北区、社長:平田 恭成)は、タイヤ、ホース、ベルトなどに使用される従来のゴム補強材よりも補強性能に優れ、環境負荷低減に貢献するゴム補強用ポリエステルナノファイバー短繊維を開発しました。

1.背 景 
(1)ゴム製品には、繰り返される変形と摩耗に耐える強度などが求められることから、補強効果を高めることを目的に短繊維をゴムの補強材として用いることが一般的です。

(2)ゴム補強用短繊維の補強効果は、使用する繊維が持つ強度のほかに、長さによって補強効果が高まるとされており、一般的には数ミリから数十ミリの長さにすることが求められています。

(3)しかし、繊維が長ければ長いほどゴムへの練りこみ工程において絡みやもつれが発生しやすくなり、繊維の分散性が低下して補強効果が低減することが課題となっていました。

(4)また、近年の環境配慮への高まりから、温室効果ガス排出削減を目的に、高分子量化や表面処理などの工程削減ニーズが急速に高まっています。

(5)こうした中、当社は、ゴム補強用短繊維の断面をポリエステルナノファイバーとポリエチレンの2種類のポリマーを配した海島複合断面(*1)とすることで、少量の添加であっても従来品と同等以上の補強効果を発現し、かつ環境負荷低減を実現するゴム補強用のポリエステルナノファイバー短繊維を開発しました。
(*1)海島複合断面:2種類のポリマーを「海」部分と「島」部分に配置した複合断面

2. 開発品の特長
(1)このたび開発した製品は、「島」部分に高い補強効果を発揮する直径400nmまたは700nmのポリエステルナノファイバーを配置し、「海」部分にはゴムと混ざりやすいポリエチレンを配置しています。ポリエチレンがゴムと分子レベルで混合するため、数千倍の本数のナノファイバーがゴムの中で均一に分散します。そのため、従来品に比べて少量で同等以上の補強効果を発現します。


 <海島複合断面>

(2)開発品の繊維の長さは1mm以下と非常に短いですが、直径が非常に小さいことからアスペクト比(*2)が高くなり、補強効果は大きくなります。また、繊維の長さが短いことから絡みやもつれが無く、ゴムと繊維が均一に分散した複合体を形成することができます。これにより、繊維が連続相(*3)となり、ゴム部分ではなく繊維に応力がかかりやすくなることから優れた補強効果を発現し、さらにはゴム製品の高い耐久性を実現します。
(*2)アスペクト比:長さ/直径の比率。アスペクト比が大きければ大きいほど補強効果は高い
(*3)連続相:点状で分散したものではなく線上または面上に連なる状態のもの

表1)参考データ
直径×長さ 繊維本数
(同重量の場合)
アスペクト比
(長さ/直径)
400㎚×0.5㎜(開発品) 25,000 1,250
700㎚×1.0㎜(開発品) 4,080 1,429
20㎛×5.0㎜(従来品) 1 250

(3)従来品と比較して高い補強効果を発現することから、繊維の強度を高める高分子化工程を削減することができます。また、繊維の長さを短くしたことから、繊維が綿状になることを防ぐ表面処理も不要となります。これらの製造プロセスの削減によって環境負荷低減や温室効果ガスの削減に貢献することができます。

(4)タイヤの用途においては、高弾性化と転がり抵抗の低減に寄与するため、燃費向上や騒音低減の効果が期待できます。また、ホースやベルト用途においては、従来困難であった高弾性率と優れた耐久性の両立が可能となります。

3.今後の展開
(1)このたび開発したゴム補強用短繊維を2023年より生産を開始し、ゴム製品を展開する企業に向けて販売をすすめていきます。その結果、2027年度10億円の売上を目指します。

(2)タイヤ、ホース、ベルトをはじめ、多種多様なゴム製品や樹脂製品を幅広く展開していくために、ナノファイバーに用いるポリマーの種類の拡充に向けた開発を進めていきます。また、環境負荷のさらなる低減を目指し、リサイクル原料を活用した製品の開発を進めていきます。

(3)帝人フロンティアは、環境戦略として「THINK ECO」を掲げ、衣料から産業資材まで幅広い用途で、環境配慮型の素材や製品を展開しています。このたび開発したゴム補強用の短繊維もこの戦略に沿ったものであり、今後も、より環境負荷低減に貢献するソリューションを提供していきます。

【 当件に関するお問合せ先 】
帝人フロンティア株式会社 広報・IR部  TEL(03)6402-7087