開発ストーリー

日本初*の着用する化粧品、
「ラフィナン®」が描く未来。

2020-12-22

約10年の研究開発期間を経て、2015年に発売された「ラフィナン®」。着ているだけで美容成分を肌に届け、うるおいを保つという新発想の製品が生まれた舞台裏に迫りました。

  • *「日本初」…衣料品型の化粧品

Project Member

竹下 皇二

西村 茉由

「繊維でスキンケアができないか」。
機能テキスタイル素材の新しいジャンル開拓へ。

吸汗速乾、接触冷感、保温、消臭など、多種多彩な機能をうたうテキスタイルがひしめく昨今。そんな中で、「着るだけで肌がうるおう」仕組みを取り入れた異色の素材づくりに取り組んだのが、技術開発部の竹下皇二です。きっかけは「肌にやさしい」繊維を求める消費者の声の高まりでした。

竹下

開発に着手したのは2005年ぐらいですね。敏感肌の方や肌トラブルを抱える方は、化学繊維に抵抗があり、肌にやさしい天然繊維にこだわる方が多いと感じていました。ちょうど当時、肌への有効成分を繊維に付着させる技術が、当社のスポーツウェア部門ですでに実用化されており、それを応用することで、スキンケア機能のある製品を開発できないかと考えたんです。美容成分として行き着いたのが、リンゴ酸。肌のpHに近い弱酸性で、食品添加物としても使われているぐらい安全な成分です。この美容成分が、着用しているあいだに徐々に放出されていく、というのが「ラフィナン®」の特長です。これは繊維に配合された特殊な樹脂のはたらきによるもので、この樹脂もオリジナルで開発しました。

西村

私が「ラフィナン®」を担当するようになったのは、入社2年目の2019年からなんですが、実は担当する前から、着るだけで肌がしっとりするなんて魅力ある製品だなと注目していました。私はいつも冬になると太ももやすねがカサカサに乾燥して痒くなっていたんですが、「ラフィナン®」のレギンスを愛用するようになってからは、クリームを塗らなくても乾燥が気にならないほどです。

竹下

日本初の「着用する化粧品」として売り出そう、という戦略は、開発段階からすでにありました。「ラフィナン®」以前にも、美容油配合の加工剤を用いた繊維など、「肌へのやさしさ」を売りにした他社製品はありましたが、美容効果にまでは踏み込めていない状況でした。そこで当社は、化粧品製造販売業者として厚生労働省の認可を受けることで、「肌荒れを防ぐ」「肌を美しく整える」「肌のうるおいを守る」などの効能訴求が法的に認められるような売り方をめざしたんです。その申請業務も技術開発部で担当したのですが、なにしろ衣料品が化粧品登録を行うというのは前代未聞のことなので、最初は役所に相談に行っても門前払い。それでも専門家も交えてリサーチと説得を進めて、結局認可が下りるまで足かけ4年かかったでしょうか。製品自体は完成していたんですが、「化粧品として売り出せなければ意味がない」と、じっと辛抱していた感じです。

最終製品化まで自社内で行い、化粧品としてのブランディングに挑む。

こうして2015年に発売された「ラフィナン®」。企画デザインからパターンやカッティング、縫製を自社管理のもと行い、最終製品としてパッケージングまで行うというのは、帝人フロンティア社内でもまだ例の少ないチャレンジです。

西村

当社が最終製品まで作って箱詰めするところまでやって、初めて「ラフィナン®」という化粧品になるわけなので、繊維素材を企業様にお売りするというこれまでのBtoBビジネスとは明らかに違いますね。

竹下

製造工程のマネジメントや、ブランドコンセプト、販促戦略、パッケージデザインなどは、開発、営業、マーケティングの3部署からメンバーを集めて一緒に考えました。化粧品には薬機法上の制約やルールがありますから、衣料品と化粧品では売り方が明らかに違う、ということをまず社内の人間から理解してもらう必要があり、そこは時間がかかりましたね。

西村

今は自社オンラインショップでの販売に加えて、新たに注力しているのが理美容室ルートです。「ラフィナン®」は、テスターを肌に塗って試せるクリームなどとは違って、店頭に置いてあるだけでは魅力が伝わりづらい商品です。「ラフィナン®」の効能を語れる伝え手が必要なのですが、その点、美容師さんは美容意識が高く、新しいものを積極的に取り入れる方が多いですし、お客様との関係性も深いですよね。ですから「ラフィナン®」を気に入った美容師さんから、お客様におすすめしていただけるような形をめざしています。理美容業界向けの展示会などを回って、商品説明をさせていただくと、興味を示してくださる方はとても多いですね。

竹下

これまで男性の開発メンバーばかりでやってきたんですが、西村さんが入ってきてくれたのを機に、開発担当も入社2年目の女性社員にバトンタッチしました。やはり女性がメインターゲットのブランドですので、より女性目線を活かしてやっていってくれれば、と思っています。私はこれまでの経緯やノウハウを伝えつつ、後方から全体を見てサポートする役割でしょうか。

肌悩みを抱えるすべての人に、
ラフィナン®という選択肢を提案できるように。

ベテランと若手が連携し、それぞれの強みを発揮してきた「ラフィナン®」チーム。ブランドデビュー当初は、手や腕、かかと用のパーツケアアイテム3品だけだったのが、その後、次第に品目が増えてラインナップも充実してきました。

西村

2020年秋冬には、初めてメンズ用インナータイプも投入します。男性でも肌の乾燥を気にされている方はけっこう多いので、そういうお悩みにアプローチできないかと思っています。社外モニター調査をしたところ、男性の方が女性よりもうるおい実感率が高い、という結果が出ました。90%以上の方が、「着用して3日以内にうるおいを感じた」と回答されているんですが、それだけ肌が乾燥していたということかもしれませんね。

竹下

インナーだと考えれば、「ラフィナン®」は一般的な価格レンジより高額ですが、化粧品だと考えれば、「ある程度お金を払っても肌への効能が高いものを使いたい」とお考えの方は多いはず。でも「ラフィナン®」がそのポジションに行くためには、「着用する化粧品」という概念自体がもっと広く社会に浸透する必要がありますね。ブランド名を聞けば誰もが「ああ、あれね」とわかる、というところまでいかないと。

西村

肌悩みを抱えた方のお役に立てるブランドだ、ということが、もっと世の中に広まるようにがんばりたいです。そういった意味で、最初に手に取りやすいアイテムとして期待しているのが、新商品のマスクタイプ「ラフィナン®美容フェイスパック」。マスクによる肌荒れ対策として、「ラフィナン®」の保湿効果がおすすめなのはもちろんですが、使いやすさの面でも女性の意見をたくさん詰め込んで作っています。マスクを人前で外すとき、内側にファンデーションがついているのを見られると、見た目が汚くて恥ずかしい、って女性は思いますよね。私もずっと気になっていたので、中面をベージュにしてファンデーションが目立たないようにしています。耳ひもも、ソフトで伸縮性があって着け心地がよいだけでなく、少し光沢があるしゃれた質感にこだわりました。高価格帯が多い「ラフィナン®」の中では、購入ハードルが低い商品なので、これをきっかけに「ラフィナン®」の効能を体感して、ファンになってくださる方が増えればと思っています。

竹下

「ラフィナン®」で、認可の問題など初めて経験するハードルをクリアしてきたことで、別ブランドの開発に活かせる知見もたくさん得られたと思います。これまでなかったものを社会に浸透させていくというのは、やることすべてが新しくて、大変なことも多いですが、やりがいはありますね。

肌悩みを抱えるすべての人に、「着るだけでスキンケア」が当たり前になる日まで。「ラフィナン®」のチャレンジはこれからも続いていきます。

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