開発ストーリー

屋外の過ごし方を変える
「SOLSOL®」で新たな市場を切り開く。

2022-03-04

食事をしたり誰かと語らったり、読書にふけったり。開放的なオープンエアで思い思いに楽しむ文化を日本にも。パラソルから広がる「SOLSOL®」のライフスタイル提案とは。

Project Member

召古 憲康

藤井 美智

テント生地づくりの伝統を背景に、
受注商売からライフスタイル提案事業への転換。

店舗や施設用テント生地の販売で、長年、国内トップシェアを誇る歴史を持つ部署「キャンバス資材課」。長い伝統を受け継ぐこの課から、新しいオープンエアの過ごし方を創出すべく2019年にデビューしたのが、多彩な骨組みと生地のバリエーションを誇る屋外用パラソルシリーズ「SOLSOL®」です。

召古

「SOLSOL®」のアイデアが最初に生まれたのは、2015年、ドイツのシュトゥットガルトで開かれた「R+T」展に行った時です。「R+T」はオーニングや日よけ関連の製品が一堂に会する国際見本市ですが、展示品の約7割がパラソルだったんですね。なぜパラソルが主流なのかとメーカーに聞くと、どこにでも置ける独立型である事とサイズも豊富で目的に合ったスペースを有効的に使えるというのが理由でした。その後、視察で欧州を回ってみると、それこそ朝のコーヒーからランチ・ディナーまで、屋外のパラソルの下で飲食を楽しむ文化が浸透していて、それが街の景観を豊かにしているんですよね。日本にはまだまだそういうシーンが少ないですが、だからこそこれからビジネスになると思いました。

藤井

当課のルーツは、店舗や施設用のテント生地を製造販売していた会社です。戦後復興の時代から、テント生地販売量では70年近くトップを走り続けていますが、最近は需要が減ってきています。

召古

昔は、テント施工業者から注文を受けて生地を納品していればよかったのですが、施工の需要が減っている今、これからはメーカーが市場をつくる時代だ、と考えました。それで最初のパラソルの製品が市場に出たのが2017年です。ただ、生地のみが自社製で、支柱などの骨材はイタリアのメーカーからの仕入れなので、当時はそのメーカーと帝人のダブルネームで販売していたんです。ただ将来を考えると、これではだめだと思って、自社ブランドを立ち上げることに決めました。イタリア側は、メーカー名が消えることに対して、最初は「絶対NO」とかなり抵抗していたんですよ。ただ、何度か足を運んで粘り強く交渉した結果、先方も日本市場の成長性に魅力を感じて、OEMという条件をのんでくれました。

藤井

それで自社ブランド「SOLSOL®」が誕生したのが2019年。私はそのブランド立ち上げからチームに加わりました。当時から、パラソルだけでなく周辺のテーブル・チェアや照明まで含めて、エクステリア空間をトータルでプロデュースできるブランドにしたいという思いがあったので、ネーミングにもそういった意図が込められています。

潜在的な市場規模は年間200億円?
オープンエアを求めるニーズの拡大が追い風に。

「自社ブランドで最終製品まで手がける」というハードルをクリアした「SOLSOL®」ですが、デビューの翌年には、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、想定外の事態が多々発生。しかしマイナス要素だけではありませんでした。

召古

現在展開しているのはパラソルと照明。本当は家具づくりにも、もっと早く着手する予定で準備を進めていたのですが、新型コロナウイルスの影響で、まだ少し時間がかかりそうです。また2020年東京オリンピックの延期・縮小で、期待していたインバウンド効果は消えてしまいましたが、一方でオープンエアを求める社会的ニーズは高まりました。これまでにも、こういうおしゃれなパラソルなどのエクステリア商材はありましたが、たいてい一般住宅向けで大きさなども限られていたんです。商業施設やパブリック空間における屋外活用の可能性に気づいて参入している大手企業が少なかったのは、チャンスでした。

藤井

私たちがターゲットにしているのは、主にホテルレストランや結婚式場、大学、ゴルフ場、キャンプ場、ショッピングモールといったところです。今はそういう業界向けメディアに広告を打ったり、提案型のウェブコンテンツをつくってSNSで発信するなど、さまざまな取り組みをしていますが、やはり効果的だったのは展示会ですね。実物を見ていただくと「こんな大きなパラソル見たことない」と皆さんおっしゃいます。

召古

社内で試算してみたところ、潜在的な市場規模は年間200億円ぐらいあるはずなんです。ただ、市場はまだ眠っている状態ですから、叩き起こさなくてはなりません。そのためには一緒に事業を広めていく販売代理店などの仲間を増やすことも重要ですね。

藤井

現在「SOLSOL®」は6社の販売代理店と一緒に取り組んでいます。やはり生地売りをしていた頃と違って、最終製品をお売りするわけなので、修理などアフターケアの体制も重要で、今それが整いつつあるところです。やはり屋外で使うものですし、あまり知識のない方が操作する可能性もあると考えると、突然の故障に対する不安を解消しないことには、購入にまで結び付かないんですね。

大阪万博、そして変貌を遂げる御堂筋とともに
「SOLSOL®」のある街並みを世界に発信。

オープンエア活用の先進国であるヨーロッパに学びつつも、生地の防炎・耐水といった機能面や、色・柄・形状のデザイン性に至るまで、本場を超える充実度を実現してきた「SOLSOL®」。今後のテーマは、「SOLSOL®」のある魅力的な空間を、さまざまな業界と連携しながらつくっていくことです。

召古

2021年には大阪モード学園さんとのコラボ企画で、デザインコンテストも開催しました。「SOLSOL®」の最大の強みはカスタマイズですから、性能を重視しつつも遊び心のあるものづくりができれば……と考えたんです。学生さんたちに「大学」「ホテル」「結婚式場」という3つのお題を投げかけて、パラソルのある空間づくりを自由に発想していただきましたが、ここから生まれたアイデアを実際に商品化していけたらとも考えています。

藤井

今後は、私たちの商材をうまく組み合わせて空間づくりを担ってくれる、専門のデザイナーと協業していく必要もあるでしょうね。

召古

次に意識しているのは2025年大阪万博。これは「SOLSOL®」のある街並みを世界に発信するチャンスです。また、国土交通省が推進する「ほこみち(歩行者利便増進道路)制度」と連動して、御堂筋も2037年までに完全歩道化を目指すというビジョンが大阪市から発表されています。これらはブランドを始めた時には想像もしていなかったことですが、大きな追い風ですよね。

藤井

日本では、とくに女性のあいだで虫や日焼けに対する抵抗感があるせいか、屋外で過ごすことに馴染みが薄いですが、もし外出先や旅先で素敵なテラスがあって、そこで過ごす楽しさを一度でも知ったら、それは文化として広がっていくと思うんです。

召古

だからまだまだやることはいっぱいありますよ。家具や暖房器具、カーテン、ブランケット、クッションといったものまで、多彩なラインナップを揃えたいですし、骨材も国内生産できるようになれたらと思っています。帝人グループのいろんなノウハウを集めれば、「SOLSOL®」はエクステリアのあらゆる課題を解決できる存在になれるはずです。私としては、「SOLSOL®」をそれぐらいボリュームのある事業に育てて、ゆくゆくはメイドインジャパンで海外にも打って出たい。定年で会社を卒業するまでに、ひとつの課ができるところまで持っていきたいというのが夢ですね。

テント生地という伝統的なモノづくりを、ライフスタイル創造型ビジネスに発展させるべく挑戦を続ける「SOLSOL®」。日本の文化や伝統に根ざしたオープンエア活用は、きっと次世代の街並みや余暇の過ごし方を、魅力的に彩ってくれることでしょう。

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