DX推進で磨く、
未来のビジネスチャンスを掴む力。

ボトムアップの取り組みが功を奏し、2024年に「DX認定事業者」となった帝人フロンティア。業務を効率化しビジネスの可能性拡大を模索してきた、その軌跡に迫ります。
Project Member

髙橋 翔平

藤本 陽子
業務効率化からビジネスの未来開拓まで、
広がるDX推進室のミッション。
帝人フロンティア社内に「DX推進室」が発足したのは2021年10月。それまで各部署で行われていた「業務効率化+営業力強化」の取り組みを全社横断型でつなぎ、シナジーをもたらすことが使命です。
私は入社してすぐにシステム部に配属となり、社内の基幹システムやアプリ運用、メンテナンスという業務に関わっていました。その後、しばらく海外事業企画部に在籍し、海外の拠点がどのように連携しているのかという全体像を把握してから、またシステム部に戻ってきました。ちょうどその頃にDX推進室が立ち上がり、私も兼任で携わることになったのですが、社内システムに関わるさまざまな業務を経験して、積み重ねてきた知見を、どこまで活かせるか?と非常にワクワクする気持ちでした。

私は、DX推進室発足の1年後からチームに加わりました。それまでは業務管理部に在籍して、部署の業務のRPA(Robotic Process Automation:パソコン上の業務を自動化する技術やソフトウェア)を担当していました。2017年よりRPAを導入し、2019年にDX推進室の前身であるRPA推進グループが発足しました。私は当時ITの専門知識が全くなかったのですが、「面白そう、やりたい」という思いで、自分から手を挙げて勉強させてもらったんです。今は、そうやって得た経験を活かして、各部署の仕事内容や悩みに合わせてRPAをカスタマイズし、導入・定着までサポートする役割を担っています。
RPAによる業務効率化はDX推進室の中核的取り組みですが、今動いているのはそれだけではありません。デジタルマーケティングやデータ分析、生成AI活用といったテーマもありますし、サプライチェーン全体を巻き込んでビジネスモデルの変革を起こすような動きも検討しています。ですからDX推進室の中でも、実装フェーズのものから研究フェーズのものまで、常時20〜30のプロジェクトが動いているんです。システム部では、まず部署ごとに直面している課題があって、それをどう解決し、安定運用するかを考えるのが中心でしたが、DX推進室は「そもそもこの先、何が必要なのか」という課題を発見する姿勢が求められます。大変ですが、自分なりにアンテナを張って新しいことを学べるのは醍醐味でもありますね。

RPAの方は一定の労働時間の短縮を達成し、第一段階はクリアできたかなというところです。ただ全社的に見れば、部署ごとにRPAの理解度や浸透度にはバラつきがあります。この先は、あらゆる部署でRPAが活用されていくことに加えて、技術専門職ではない一般社員が、自分たちの業務に見合ったRPAをカスタマイズできるように支援することも大事だと考えています。そうやって社内だけでなく、グループ会社にもどんどん展開していきたいですね。
さまざまな人を巻き込み、
DXをめぐる対話を促進。
商社+メーカーという機能を持つ帝人フロンティアの強みを、DXの力でより磨いていこうとするこの試み。推進室メンバーが重視したのは、立場の違いを超えた対話を重ねながら、社内に仲間を増やしていくことでした。
振り返れば、推進室が立ち上がったばかりの頃は、まだ社内の認識も「DXって一体なに?」という感じでした。ですから、セクションごとにキーパーソンになる人に会いに行き、「こちらはこういうことを考えているけれど、現場ではどう考えていますか?」という意見交換を行うところからのスタートでした。部署ごとに使われている用語も業務背景も違い、一度話を聞いただけでは全貌を理解しきれず苦労しましたが、何度もすり合わせを行ったことで、次のステップへ進もうとする我々の姿勢を受け入れてもらえた気がします。

同時に社内認知拡大の施策として、2022年から半年ほどかけて「DX-DAY」という情報発信にも取り組みました。推進室の中で進めているプロジェクトの紹介や、DXについて社長に語ってもらう対談を、動画コンテンツにして社内に配信するという自主企画で、みんな慣れない中、手探りで撮影や編集をして……。そういう発信を行うことで、興味を持ってくれる人を増やし、「デジタルを使って一緒に新しい価値を作っていこう」という気運をつくることが狙いでした。
そういう意味では、2024年6月に「DX認定事業者」の認定を取得できたのも意義あることでした。繊維業界でのDX認定事業者がまだ少ない中、当社がこれを取得できたことで、社内外から認められてDX促進が加速した面はあると思います。もちろん、認定事業者になれたことは単なる通過点でしかなく、これからも持続的に、仕組みの改革だけでなく、働く人のマインドも変革するような取り組みを続けていかなければと思っています。

マインドといえば、当初からRPAの成果として、単なる業務効率化だけでなく社員のメンタルヘルス向上も掲げていました。仕事の属人化によるプレッシャーや、「締切時間までに業務を終えないといけない」というようなタスクを、自動化によって減らせたことで、精神的な負担が減ったという声は多く届いています。もちろん、自動化によって自分の仕事が奪われるのではないかという不安を抱く人も、中にはいたと思いますが、これまで目の前のタスクに追われて手が回らなかったことに時間を使える、つまり本来人間がやるべきだった、本質的な価値向上に取り組んでもらえるんですよという伝え方をしています。
DX推進活動を通して再発見した、
帝人フロンティアの強み
次世代を担う若手社員が前線に立って推進してきたDX。これまでなかったタイプの対話を通じて、改めて自社の魅力に気づくことも多かったといいます。
活動を続ける中で気付きがあったのは、当社はまだまだ伸び代がある、ということです。もちろん思うように物事が進まず歯がゆい思いをすることもありましたが、一方で、こちらの投げかけに対して、同じ思いを持っている人たちが積極的に手を挙げてくれる場面もあり、そこは当社のいいところだなと思いました。企業によっては上からのトップダウンでDXを進めるところもあるでしょうが、私たちはもっと草の根的に、現場の人と一緒に考えながら物事を動かしていこうというマインドが大きかったですね。

これまでにも「こうしたらもっと良くなるのに」とか「ここを変えたい」という思いは、それぞれの中に少しずつあったと思います。それがDX推進をきっかけに、たくさんの意見となって表に現れてきたおかげで、当初自分たちが思い描いていたよりもずっといいものができていくことが、すごく嬉しかったですね。そういう「一緒に作り上げる」素地ができたことで、これからDX活用がより加速していくと思っています。
DX推進は、農業にたとえれば土壌づくりのようなもの。目に見える結果が現れるのはまだこれからですが、この取り組みが新たな企業風土を育て、未来のビジネスチャンスを掴む力につながっていくことでしょう。
