開発ストーリー

「コードレ®︎」が世界に巻き起こす
新たな技術開発とは。

2023-03-22

世界が注目する「コードレ®︎」、そのものづくりとは。

Project Member

帝人コードレ株式会社

北埜 稔

北條 貴之

武居 陽祐

人工皮革からフィルムまで。
世界で戦う選手の足元も「コードレ®︎」。

今や私たちの暮らしに欠かせない存在となっている人工皮革や合成皮革の開発・製造・販売を行うメーカーとして、1971に創立した帝人コードレ。競技用ボールやシューズをはじめ、生活・産業資材の分野で世界から注目されている、そのものづくりの最前線とは。

北埜

当社はもともとスポーツシューズやボールなどの用途に強いメーカーです。競技スポーツという激しく厳しい環境で使用される中で揉まれてきていますので、培ってきた耐久性、耐摩耗性やデザイン要求などへの対応力は優れていて、その強みを、タウンシューズやランドセル、産業資材などにも生かしているのが特長です。社名である「コードレ」は、当社で製造している人工皮革やフィルム製品の総称としても使われています。

武居

人工皮革というのはポリエステルなどの特殊不織布の基布にウレタンを組み合わせたものですが、10年ほど前からは、不織布を使用しないフィルムタイプの製品も登場しています。これは軽い上に熱圧着で加工できるので縫う必要がなく、成形の自由度も非常に高いんです。とくにサッカースパイクのアッパー素材としては、このフィルムタイプが主流となっています。

北埜

サッカーのワールドカップが盛り上がりましたが、私たちの「コードレ®︎」を使用したスパイクを出場選手の多くに履いていただいていました。20年前にはまだ10%程度のシェアしかありませんでしたが、今は名だたるシューズブランドに軒並み採用いただいていますから、世界的に有名な選手も私たちの製品が使われたシューズを履いていると思うと、うれしくなります。

北條

私もサッカーワールドカップでは、選手よりついシューズばかり目で追ってしまいますね(笑)。ちなみにサッカースパイクって、15年前は片足で350〜360g程度だったのが、今ではもう200gを切っているんです。さらに特殊加工で濡れても滑りにくくなっているところも、評価されているんだと思います。

「ヴィーガンレザーといえば帝人コードレ」
そんな認識が世界で広がるまで。

人工皮革といえば「安価な天然皮革の代用品」と見られがちだったのも、今は昔。世界的に環境意識や動物愛護意識が高まる中で、現在、人工皮革の一部は別名「ヴィーガンレザー」とも呼ばれ、新たな価値をもった選択肢として市場で存在感を増しています。

北埜

当社ではすでに20年前から環境配慮企業として、人工皮革の基布に使われるポリエステル不織布を、リサイクルポリエステル「エコペット®︎」に置き換えを進めています。でも長い間、クライアント企業にその環境価値を提案しても、なかなか振り向いていただけませんでした。それがある時、ヨーロッパの著名デザイナーがその環境への啓発活動に目を留められ、「コードレ®︎」を使用したスニーカーを2017年のコレクションに使ってくださったんです。その時にデザイナーからいただいた呼び名が「ヴィーガンレザー」。そこから一気に火がついて国内外から問い合わせが急増しました。今ではクライアントが「ヴィーガンレザー」というとまず当社にお声がけいただけるようになりました。

北條

それと同時に、リサイクル素材を使用していることの証明も強く求められるようになりました。私は、新素材リサーチと並行して、各種認証取得の窓口も担当しており、「コードレ®︎」に使用しているリサイクルポリエステル繊維「エコペット®︎」について、国際的なリサイクル認証であるRCS認証の取得にたずさわりました。これは入社してからの経験の中でも、とくに大変だった時期だったかもしれません。トレーサビリティなども細かく問われるため、すべてしっかり文書化して明示する必要があり、技術課や協力工場など各方面から色々なデータを集めて進めましたが、認証を取得するまでに1年以上かかりました。

武居

とくに海外有名ブランドは、リサイクル認証を取得している製品でないと採用しないと明言しているところもありますから、認証が取れたことによる追い風は感じます。最近は「エコペット®︎」以外の部分でも、廃棄後も環境にやさしいものを求めるクライアントなど、さらなる環境対応のリクエストが各方面から出ています。毎日、何かしら産みの苦しみを味わっている感じですが、つくったものが実際に店頭に並んで、世界の人に手に取っていただけるというのは大きな喜びだと思います。

強くてタフな人工皮革に
時代が求める価値をプラスして。

そんな帝人コードレの最近の注目アイテムが、2021年9月にデビューした「ウイルガード®︎」。コロナ禍を経て高まった「抗菌・抗ウイルス」のニーズに対応した人工皮革です。

北埜

抗菌・抗ウイルス性能をもった製品は、すでに2018年ごろから取り扱っていたのですが、それがコロナ禍になってから問い合わせが急増しました。ならばきちんと抗菌・抗ウイルスの認証も取って、ブランドとして販売を強化しようということになり、製品のアップデートから取りかかりました。

武居

人工皮革の場合、織物やニットと違って繊維内部に有効成分を練り込むということができないので、表面を皮膜のようなもので覆うしかありません。それでも手ざわりや見た目のよさを損なわず、かつ抗菌・抗ウイルスの持続性もある、という条件を両立するのはなかなかむずかしくて、かなり試行錯誤しました。そんな中で選んだのが、小林製薬さんの持続性抗菌剤「KOBA-GUARD」です。もともとは原子力潜水艦の閉ざされた空間で、カビなどの微生物の増殖を抑えるために開発された技術だそうです。

北條

私はこの件でも認証を取るミッションを担いました。今回取得したのは、抗菌・抗ウィルスに関する国内認証「SIAA」です。抗菌・抗ウイルスに一定の効果があり、持続性を保持していることはもちろんですが、使用した製剤が人の皮膚に触れても炎症を起こさないことなども問われます。したがって、試験は非常に厳しく、結局手続き開始から取得までに1年ぐらいはかかったでしょうか。

北埜

「ウイルガード®︎」はまずランドセル向けに投入しましたが、抗菌・抗ウイルスが求められる場面は、ほかにもたくさんあります。ですから今は水面下で次の展開に向けて準備をしているところです。ヴィーガンレザーという評判をきっかけに、「コードレ®︎」には非常に大きな追い風が吹いているので、これからも世界で求められるものを提供していきたいと考えています。

北條

私たち品質保証サイドでも、認証取得にかかる時間をできるだけ短縮して、新商品が出来るだけ早く世に出せるようサポートをしていきたいと思います。

開発・製造・販売のチーム体制で支える、世界の「コードレ®︎」ブランド。レザーの既成概念を塗り替えるものづくりは、これからも続いてゆきます。

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